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vol.1国際公会計基準とは何か?

 国際公会計基準審議会(IPSASB)は、国際会計士連盟の常設委員会の一つで、国際公会計基準等の基準やガイドラインを作成・公表しています。

わが国からは現在、伊澤賢司(ボードメンバー)、蕗谷竹生(テクニカル・アドバイザー)の2名がIPSASBに出席しています。

 IPSASBの最新動向につきましては、日本公認会計協会の機関誌である「会計・監査ジャーナル」に随時記事を投稿、掲載しております。同協会及び第一法規株式会社のご厚意により、このたび本JAGAの記事を通じて、「会計・監査ジャーナル」掲載の記事を中心にIPSASBの情報をご提供することができることとなりました。

 IPSASは諸外国・国際機関において今後もより普及することが見込まれます。また、その考え方はわが国の政府及び自治体の会計にも影響を及ぼすことが想定されます。本記事が、研究者及び関係各位のご参考となることを願っております。

1 IFACとIPSASB

 国際公会計基準は、国際会計士連盟(IFAC)の国際公会計基準審議会(IPSASB)が作成している。
 IFACは1977年に設立され、日本公認会計士協会(JICPA)は設立以来の会員団体である。2014年7月現在、130カ国、179会員団体が加盟している。民間セクターの会計基準の設定(IASBがIFRSを策定)を除く、会計・監査に関する国際基準の設定とIFRSを含む国際基準の普及を行っている。
 IPSASBは、IFAC内の常設機関の一つである。1986年に公的セクター委員会(PSC)として設立され、2004年にIPSASBに名称変更した。国際公会計基準を中心とする公的部門の会計に関する基準やガイドラインを策定している。会議は年に4回、各4日間にわたり開催されている。IPSASBの事務局がカナダのトロントにある関係で、うち年に3回はトロントで開催されている。

2 IPSASBのメンバー

 IPSASBには現在、JICPAの推薦により、伊澤賢司がボードメンバー、蕗谷竹生がテクニカル・アドバイザーとして出席している。 IPSASBではボードメンバーのみが投票権を有し、議事もボードメンバーを中心に進行する。テクニカル・アドバイザーはボードメンバーの補佐を担い、議長が認めた場合には発言することもある。

●ボードメンバーの出身国

 スイス(議長)、カナダ(副議長)、英国、米国、モロッコ、中国、日本、パナマ、ドイツ、ブラジル、フランス、南アフリカ共和国、マレーシア、ルーマニア、ニュージーランド、オーストラリア、パキスタン、カナダ、イタリア
ボードメンバーは原則3年任期(1回限り再任可)で、はすべて非常勤、無報酬

●IPSASBオブザーバー

 アジア開発銀行、欧州委員会、欧州投資銀行、欧州統計機関、国際会計基準審議会、国際通貨基金、最高会計検査機関国際組織、経済協力開発機構、国連開発機関、国際連合、世界銀行

3 IPSASBの作成する文書の相互関係

 IPSASBは、一般目的財務諸表に適用される「国際公会計基準(IPSAS)」と、財務諸表以外の一般目的財務報告書に適用される「推奨実務ガイドライン(RPG)」を作成・公表している。
 また、IPSASやRPGを新規に作成する場合、又は既存のIPSASやRPGを修正する場合の基礎として、概念フレームワークを作成・公表している。(2014年7月現在、第1章~第4章まで公表済み)

4 公表済みのIPSAS等

 これまでに32本のIPSASが作成・公表されている。ただし、IPSAS第15号は廃止されたため、現行の基準は合計31本となる。
 また、2本のRPGが作成・公表されている。IPSAS、RPG以外にも、各種の研究報告書、指針等を公表している。各文書は、IPSASBのWEBサイトにおいて、無料でダウンロードすることが可能である。

5 検討中の論点等

 現在進行中の主な検討事項は、概念フレームワーク(2014年9月会議で最終承認の予定)と、公的部門特有の検討事項(初度適用の基準、公的部門の結合、金融商品、社会給付、サービス業績情報等)である。

6 IPSASの普及状況

 IPSASBには適用を強制する権限はない。あくまで適用は各国の任意である。
 ただし、世界銀行、アジア開発銀行などが積極的に発展途上国への導入を支援しており、同銀行から資金調達する際にはIPSASの採用が条件とされる場合があるため、特に発展途上国において適用が進んできている。
 IPSASB事務局の発表によると、60~80国がIPSASを適用したか、または適用する過程にある。例えば、ニュージーランド、南アジア諸国(タイ、インドネシア、マレーシア)、アフリカ諸国(ケニヤ、南アフリカ)、ラテン及び南アメリカ諸国(ペルー、ブラジル)、一部ヨーロッパ諸国(スイス、オーストリア、エストニア)など。ロシア、インド、中国なども時期は明確に定めていないが、適用する意向を表明している。
 EU加盟国は、IPSASを基礎とする欧州公会計基準(EPSAS)を2020年に採用する方向で調整中。
 また、特定の国に属さない国際機関による適用も進んでいる。(OECD、NATO、EU、国連機関等が適用又は適用に向けて調整中)

コーナー編集担当 伊澤賢司・蕗谷竹生

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